私は昔から炭酸飲料水を飲まないようにしています。なぜなら、子供の頃に母親からよく「炭酸を飲むと歯や骨が溶けるから飲んじゃダメ!」と教えられていたからです。
でも、最近では炭酸水が胃腸の機能を活発にするなんて言われていて、健康に良いイメージに変わってきています。それなら私も炭酸飲料を飲んでみたくなるのですが、やっぱり歯や骨が溶けるっていうのがどうしても気になっていました。
しかし、ある日ふと「そもそも炭酸で、実際に歯や骨が溶けた話なんて聞いたことが無いよな…」と思ってしまいました。専門家の中でも、炭酸飲料が骨粗鬆症の原因になるなんて言ってる人を見たことがありません。
「こりゃあ、よくある迷信の一つなんじゃないの?」そう考えて、その真相を調べてみたら、なんと実はやっぱり炭酸飲料水は歯や骨を溶かす危険のある飲み物だったんです!
いったいなぜ危険なんでしょうか?
というわけで、今回は炭酸飲料水が歯や骨に与える悪影響についてお伝えします。
目次
炭酸は歯や骨を溶かすと言われている理由
昔から炭酸が歯や骨を溶かすと言われてきました。でも、その根拠って何なのでしょうか?
ポイントは、文字通り炭酸です。二酸化炭素が溶け込んだ炭酸水は、酸性になります。
これが歯や骨と反応して、炭酸カルシウムになって溶けてしまうというものです。
実際、私が母親から聞いていた理由もこのようなものでした。
確かに炭酸水に歯や骨を長時間浸しておくと、溶けてしまうのは事実のようですね。
でも、私たちが炭酸水を飲む時って、別に歯や骨を長時間、浸しておくような飲み方じゃないですよね?
歯が炭酸飲料水に触れている時間は僅かですし、骨であれば、そもそも炭酸に触れることなんてありません。
果たして、本当に炭酸が歯や骨を溶かすのでしょうか?
炭酸は歯や骨を溶かさない!
実は炭酸が歯や骨を溶かすようなことはありません!
まず一番溶ける可能性がある歯ですが、歯が溶け始めるのは、酸性度がPH5.3~PH5.5を下回ったくらいからと言われています。
炭酸水の酸性度はPH4.6程度と言われているので、これだけだと十分歯が溶ける酸性度と言えます。
しかし、実際に歯のエナメル質が溶けるかどうかは、単なる酸性度だけでなく、カルシウムイオンやリン酸イオンが含まれているかどうかも関係してきます。
⇒ エナメル質臨界 pH についての理論的考察
また、口の中に十分な量の唾液が分泌されていれば、炭酸水を飲んだ後は、口の中の酸性度はすぐに中性に戻ってしまいます。
これらのことから、炭酸水で歯が溶けるようなことはあり得ないのです。
また、骨に至っては、既に書いてる通り、炭酸水に触れること自体が無いので、なおさら溶けたりすることはありません。
というわけで、炭酸が歯や骨を溶かすようなことはありません。しかし、炭酸は大丈夫なんですが、実は歯や骨に対して本当に危険なのは、別の物質なのです。
それはズバリ、砂糖です!
炭酸飲料水には、大量の砂糖が入っています。この砂糖は歯や骨にとって非常な脅威になるのです!
いったいなぜ脅威になるのか?次はその理由をお伝えします。
本当に危険なのは糖分だった
歯や骨に対して、なぜ砂糖が危険なのでしょうか?
その仕組みは歯と骨でそれぞれ違ってきます。
順番に見ていきましょう。
歯の場合
砂糖が歯を溶かしてしまう仕組みは、単純に虫歯になるからです!
砂糖はほとんどがショ糖(スクロース)という物質です。このショ糖は、代表的な虫歯菌であるミュータンス菌の大好物なのです。
ミュータンス菌はショ糖を分解して、グルカンという粘着性のある物質を作り出します。これがいわゆる歯垢です。
実はこのグルカンはキノコや穀物に多く含まれる食物繊維の一つで、免疫力を活性化させたり、がん予防に効果がある優れた働きがあります。
しかし、歯の表面に付着したグルカンは、歯の大敵です、グルカンは歯の表面に付着します。ミュータンス菌は、このグルカンの中にたくさん存在していて、自分で作ったグルカンをエサにして、どんどん増えながら乳酸を作っていきます。
歯垢はミュータンス菌が作り出した乳酸のおかげで、特に酸性度が高いため、やがてエナメル質が溶けてしまう、脱灰現象が起きて、虫歯になってしまうのです。
ちなみに悪さをするのは砂糖なので、単なる炭酸水やノンシュガーの炭酸飲料水は、問題無いので安心してください。
骨の場合
骨の場合はもっと複雑です。
人間は砂糖をそのままエネルギーにできるわけではありません。実は様々な栄養素を消費しなければ、エネルギーにできないのです。これを糖代謝(解糖系)といいます。
この糖代謝はいくつもの複雑な化学反応を経ていくものなので、もの凄く大雑把に説明すると次のようになります。
まず、砂糖は消化吸収された後、一部がグリコーゲンという物質になって貯蔵されます。
グリコーゲンは、すぐにぶどう糖に分解されて、エネルギー源として利用しやすい特徴があります。
そして、このグリコーゲンがエネルギーになる流れはこうです。
グリコーゲン⇒ぶどう糖⇒ピルビン酸
しかし、これはいわゆる有酸素運動の時の糖代謝の流れです。
実は運動を始めたばかりの時や、あまりに激しい運動をして、酸素の供給が間に合わないような時は、いわゆる無酸素運動になります。
このような無酸素運動の時の流れは、こうなります。
グリコーゲン⇒ぶどう糖⇒乳酸
やっぱりここでも乳酸が悪さをします。
無酸素運動によって、乳酸がたくさん作られると、血液が酸性に傾いてしまいます。
そこで、これを中和するために、血液に元々ある炭酸水素塩と呼ばれるアルカリ性の物質が使われます。
しかし、この炭酸水素塩が血液中に不足してくると、骨の中からカルシウムを取り出して、炭酸水素塩の一つである、炭酸水素カルシウムという物質を作り出します。
こうして、増え続ける乳酸を骨から作り出した炭酸水素カルシウムで中和し続けるのです。
当然、これを繰り返すと骨は脆くなってしまいます。
また、一部の炭酸飲料水には、味を調える目的で、原材料に酸味料が使われています。実はこれも骨を脆くする原因になります。
この酸味料の正体は主に、オルトリン酸(H3PO4)というリン酸の一種です。
実はリン酸も血液中の炭酸水素塩と反応しやすいため、血液中の炭酸水素カルシウムを減らしてしまいます。
人間の体は血液中のカルシウム濃度を一定に保とうとするため、やはり骨の中からカルシウムを取り出して、カルシウムが薄まらないようにしてしまうのです。
このように砂糖や酸味料が入っている炭酸飲料水は、骨を弱くしてしまう危険性があるのです。
まとめ
といわけで、今回は炭酸が歯や骨を溶かすということの真相について、お伝えしました。
調べてみた結果をもう一度おさらいしましょう。
- 炭酸が歯や骨を溶かすことはあり得ない
- 炭酸飲料水に含まれている砂糖に酸味料が歯や骨を脆くする危険がある
昔から炭酸飲料水を飲むと歯や骨が溶けるなんて言われてきましたが、別に炭酸が悪いのではなく、実は本当に悪いのは、炭酸飲料水にたくさん含まれている砂糖だったのです。
だから、昔の人が言ってたことは、間違っていたものの、結果的には歯や骨を弱くするという意味では正しかったのです。
でも、悪いのは砂糖なので、とうぜんただの炭酸水や砂糖も酸味料も入ってない炭酸飲料水なら問題ありません。
つまり、ビールなんかも歯や骨には影響が無いので、いくら飲んでも大丈夫ってことですね!(でも、違う意味で体に悪いので、ほどほどが良いですが…)
これで私も安心して炭酸水を飲めます!
本当に悪いのは砂糖なので、皆さんも安心して炭酸水を飲んでくださいね。