プロローグ
  • 少しくらい給料が減ってもいいから、週休3日にして欲しい
  • 昇進しなくて良いので、自分の好きな仕事をさせて欲しい
  • 打ち合わせが無い日は、好きな場所で好きな時間に仕事がしたい
  • 苦手な人と一緒にしたくない
  • 達成するつもりがない個人目標を押し付けないで欲しい

これは全部、サラリーマン時代の私がいつも思っていたことです。我ながらやる気のない、サラリーマンだったなと思います。

私は元々、大手携帯電話会社のシステムエンジニアをしていました。携帯電話業界と言えば、大手3キャリアと呼ばれる、NTTドコモ、au、ソフトバンクや、ローコストキャリアと呼ばれる比較的利用料金が安い業者が、熾烈な競争を繰り広げている業界です。

それだけでなく、総務省からは常に利用料金の値下げ圧力にさらされています。

プレッシャーが大きい職場だったので、心身の健康を崩して、休職したり辞めたりする人も多かったです。

そんな業界なので、私が望まなくても、会社全体は常にライバルとの競争に勝つことを目標に、営業目標の達成を追求します。そして、そのために、社員は全て、個人の業務目標を達成することを求められるのです。

というわけで半年毎に、業務目標を作成してその達成状況を評価する、個人面談が行われるわけですが、私はこれが嫌で仕方がありませんでした。なぜなら、正直に自分が達成したい目標を作成しても、必ずそれを否定されるからです。

『齋藤さんレベルの経験豊富なエンジニアだったら、ぜひ○○を目指して欲しい』

…なんて感じで、上司におだてられて、自分には荷が重い目標や責任を負わされるのです。やがて、全く結果が出ていない状態で、半年が過ぎてしまいます。そして、無理やりでも達成できたように取り繕うか、言い訳を考えるなんてことを繰り返すのです。

「結果にコミットする」というのは、某有名パーソナルトレーニングのサービスのキャッチコピーですが、私の場合は「ぜんぜん結果にコミットしないエンジニア」でした。

それでも、当時の私は、”会社組織に属しているのだから当然だ…”とか、”どんな仕事だって目標達成を求められるものだ…”と思っていました。そして、コミットできない…というか立てた次の日には忘れてしまっている目標に半年毎に悩まされることを繰り返していました。

でも、このような競争しながら、上を目指すスタイルには、無理があることに、多くの日本人は、感覚的に気付いていると思うんです。

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上を目指しても得るものは少ない

ある日のニュースに、最近のエベレストで起きている問題の記事がありました。そのニュースに掲載されていた写真には、エベレストの頂上まで続く、登山家たちの大渋滞の様子が写っていたのです。

私はエベレストに登頂できる人は、ほんの一握りの選び抜かれた登山家だけで、運と実力を兼ね備えていないと無理なことだと思っていました。そのため、頂上付近は常に誰もいない、孤独な空間だと思い込んでいたんです。

ところが、最近はエベレスト登頂を目指す登山家は、増える一方なんだそうです。しかし、エベレストの山頂にたどり着くためには、天気が良い日を選ぶ必要があります。ところが、天気が良い日はそう多くないため、天候条件の良い日になると、このような渋滞が日常的に起きてしまうそうです。

中には渋滞の中で登頂を待っている間に、亡くなってしまった登山家もいて、このことが世界で問題になっているのだとか…。

私はこのニュースを見て、これが現代人の人生にも通じるような気がしました。

スポーツでも、ビジネスでも、トップを目指そうと思ったら、たくさんのライバルがいます。そのため、トップを目指しても、そのポジションには既に大勢の人がいて、諦めざるを得ないかもしれません。たとえトップを取れても、既に多くの人がそのポジションにいるせいで、せっかくの功績も埋もれてしまい、大した利益を得られないなんてことにもなりかねません。

下手したら、そこにたどり着くまでに、健康を始めとした大切なものを失ってしまうリスクさえあります。

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上を目指す圧力が現代人を追い詰める

そもそも問題なのは、トップを取りたいなんて思ってないのに、成長することや目標達成を押し付けられている人がたくさんいることです。

望んでない人に、エベレスト登山を強要するなんてことはあり得ない事ですよね?でも、今の世の中では、それに近いことが、普通に行われているように思えます。

少なくとも、私が働いていた会社では、当然のように起きていました。

例えば、システムエンジニアをしていた頃の私は、常にこんな疑問を持っていました。

  • 『人の暮らしを便利にするための通信サービスのはずなのに、なぜ、それを作る私たちは、心身の健康を犠牲にしなければならないのだろう…』
  • 『頑張って新サービスや新機能を作ってトップを取っても、すぐに他者に追従されてトップから脱落するのに、なぜここまで身を削らなければならないのだろう…』
  • 『会社は”1秒でもシステムを停止させてはならない”と言うけど、ユーザーは、1秒くらい停止したって文句なんて言わない…』

ここまで高い基準の仕事をすることで、いったい誰が喜んでいるのかが、私には分かりませんでした。

あなたも、似たようなことを感じながら仕事をした経験はないでしょうか?

努力して成長し、競争に勝って、トップを取ることは、確かに価値があります。富や名声、人間的な成長が得られるかもしれません。

でも、そのために払う犠牲は、どんどん大きくなっているように思います。得られるものとそれに対する犠牲の大きさは、だんだん釣り合いが取れなくなってきているのです。

望んで上を目指している人なら、犠牲を払うことにも納得できるかもしれません。しかし、望んでいない人にとっては、ただ追い詰められて疲弊するだけです。

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競争に勝つことをあきらめる

そんな疑問を感じながら、仕事を続けた結果、生まれつきの持病の心臓病が悪化して、頻繁に発作がおきるようになってしまいました。さらにうつ病まで併発させ、2017年6月に会社を辞めることになりました。

このタイミングで会社を辞めることになるなんて、人生の計画には無かったので、当然もの凄く不安でした。

サラリーマンを辞めたということは、自分で稼がなければいけないということです。フリーランスは自由でストレスが無い代わりに、誰も頼れる人はいないですし、収入も不安定なので、将来に対する不安はもの凄いです。

不安を消すために、最初はサラリーマン時代よりも努力しました。でも、それじゃあ、相変わらず上を目指すライフスタイルのままなので、ちっとも幸せを感じませんでした。

だから、考え方を変えることにしました。今まで上を目指していたのだから、逆に下を目指せば良いのだと考えることにしたのです。

我ながら単純な発想ですが、具体的に考えてみると、これが結構理にかなっていたんです。

例えば、現在の私は、システムエンジニア時代に培った、ITスキルを活かしたこのような仕事をしています。

  • ホームページ制作業
  • ブログ運営
  • ブログ運営とプログラミングの講師業

ホームページ制作業は、ライバルだらけのいわゆるレッドオーシャンの業界です。競争に勝つためには、広告や営業活動が必須です。でも、私は営業活動が苦手なので、新しい仕事の獲得は、既存のお客さんからの紹介に任せています。

ブログ運営に関しては、記事を毎日書いてSNSも一緒にやった方が、アクセス数が増えることは分かっています。でも、そのためには時間も労力もたくさん必要です。だから、私はSNSはやらず、マイペースにブログの記事だけを書くようにしています。

さらに、講師業は業務委託でやっており、運営側の仕事や、チームでやる仕事は、基本的に断るようにしています。なぜなら、一緒に仕事をする人は、自分で選びたいからです。もし、相性が悪い人と仕事をすることになると、大きなストレスになってしまいます。

自分で書いていても、単に無計画で怠惰でワガママなだけのように思ってしまいますが、そうじゃあないんです。

これらに共通する考え方は『勝つことをあきらめる』ということです。

競争に勝てる自分になることを”あきらめ”ハードワークできる自分になるのを”あきらめ”苦手な人と上手に付き合える自分になるのを”あきらめ”たのです。

キッパリとあきらめると、当然その分収入が下がります。現在の収入は、サラリーマン時代の2/3になってしまいました。

でも、あきらめることで、様々な余裕を作ることができました。仕事の時間も、休みの時間も、全て自分の自由にできます。

自由にスケジュール調整ができるので、知り合いの農家さんにお願いして、毎年さくらんぼ収穫のバイトなんかもやっています。バイト代だけでなく、商品価値の無いさくらんぼ(と言っても、ちょっとシミがあるくらい)を大量に貰えるので、仕事というよりもさくらんぼ狩りのアクティビティに行ってる感覚です。

疲れたなぁと思ったら、突然、遠くにドライブ旅行に行ったりなんかもします。

好き勝手に暮らして、収入も下がっているのに、なぜか毎月4万円も、貯金できています。1つの仕事で稼ごうと思うと、必然的にその仕事を極める必要が出てきます。でも、それは上を目指す考え方です。

しかし、ほどほどの収入で満足すれば、その仕事を極めるための犠牲は不要です。そして、そのような仕事を複数持った方が、全体の収入額は減っても、それを補って余りある恩恵が得られます。

それでも、世の中の多くの人は、得るものが少ないと分かっているのに、相変わらず上ばかり見て登って行きます。

しかし、いつの間にか、下山する人の方が、逆に幸せに暮らせる時代になってきました。

頂上を目指すのをあきらめて、麓の方に目を移す『テッペンを目指さない生き方』をすればと、きっと今まで見えなかったものが、見えるはずです。

そんな私のあきらめる生き方を知ってもらって、一人でも多くの人が、希望を持つことができたら、嬉しいなぁと思います。

そこで、まずこの本の前半では、現在に至るまでの私の半生を書いていきます。システムエンジニア時代の小さな栄光から、うつになって体を壊し、42歳で仙台に移住するまでです。“こんな奴でもできるなら、自分にもできるかも”と思っていただければ幸いです。

そして、後半は一つのことしかできない典型的サラリーマンの私が自分で仕事を作って、移住を果たし、今のライフスタイルを確立するまでの実体験を中心に書いていきます。考え方やお金の稼ぎ方など、具体的なノウハウが中心です。

このブログを読むことで、あなたにとっての、あきらめるべきものが見つかりますように!

それでは『テッペンを目指さない生き方』のスタートです。