天気予報では、よく「放射冷却現象により気温が下がる」なんて言葉を聞くことがあります。
とてもよく聞く言葉なのに、なぜそれが起きるのか?その理由を知らない人も多いかもしれません。
気象予報士の方は、「雲が無くよく晴れるので放射冷却が起きやすい」なんて言います。それを聞くと私たちは”雲が断熱材みたいな働きをする”と思うかもしれません。
でも、実はそうじゃないんですよ!
というわけで、今回は放射冷却現象の原理をなるべく簡単に分かりやすく解説します!
放射冷却現象とは?
放射冷却現象とは、実は気象用語ではなく、物理の用語なんです。
天気予報で使われている放射冷却現象を理解するためにも、重要なので、まずは物理における放射冷却現象のことを解説します。
実は全ての物体は、電磁波を放出しています。電磁波とは要は光とか電波、赤外線や紫外線など全てのことです。
私たち人間の体も、微量なので感じることはできませんが、ちゃんと電磁波を放出しています。
全ての電磁波はエネルギーを持っているので、電磁波を出せば、その物体のエネルギーが減って、温度が下がるのです。
そして、このようにして温度が下がることを放射冷却現象と呼ぶのです。
また、物体は逆に電磁波を浴びると、エネルギーを貰うことになるので、温度が上がります。
例えば遠赤外線ヒーターのような暖房器具の場合は、赤外線という形でエネルギーを放出しています。
それを部屋の中の家具や人間の体が浴びることで、温度が上がり、その結果、部屋の中も暖かくなるわけです。
ただし、実際に普通に生活しているなかでは、放射冷却を実感することは難しいです。
普段の生活では、周りには様々な物体が存在します。
そのような中で、人間も含めたあらゆる物体は、常に電磁波を放出したり、逆に浴びたりしています。
そのため、電磁波を放出しても、ある程度は周りから浴びるため、なかなか実感できるほど温度が下がらないわけです。
更には人間の体の場合は、体内でエネルギーを燃焼させて、常に熱を作り出すことで、体温を維持しています。私たちの体は、全く体温が下がらないような仕組みになっているので、なおさら実感するのが難しいわけですね。
というわけで、ここまでは放射冷却とはどういうものなのかを説明しました。
でも、私たちが知りたいのは、天気予報で出てくる放射冷却現象のことですよね?
そこで、次は地球上で起きる放射冷却現象を説明します。
気象における放射冷却の仕組み
天気予報でよく言われる放射冷却現象も、原理としては、普通の物体と同じです。
単にそれが地球規模で起きてるだけのことです。
こちらの図が放射冷却現象の図です。全ての物体は電磁波を出しているわけですが、それは地球だって同じです。
地表からも電磁波が放出されるため、地上付近の温度もどんどん下がっていくわけです。
そして、実は雲があっても、放射冷却現象は起きています。地表からは変わらずに同じ量の電磁波が放出されています。
しかし、雲がある場合は、雲からも電磁波が放出されます。雲から放出された電磁波は地表にも届くため、その分地表の温度が上がってしまうのです。
このように放射冷却が起きるポイントは、あくまでも電磁波のやり取りです。
よく気象予報士が放射冷却現象の原理を”断熱材の役割をする雲が無いため、熱が宇宙空間に逃げていく”なんて説明していることがあります。
なるべく分かりやすく説明しようとしてくれているのでしょうが、実はこれは間違いなのです。
一言で”放射冷却で気温が下がる”なんて言っても、実際には、放出する電磁波と浴びる電磁波のバランスによっては、温度が下がらないこともあります。
例えば、晴れの日の昼間は、雲が無いにも関わらず、気温は下がるどころか、どんどん上がる一方です。
これは太陽光が地表に降り注ぐお陰で、熱放射で冷える以上に暖められてしまうからです。
ちなみに放射冷却による温度の下がりやすさは、物質の種類によって違います。
例えば水は放射冷却が起きにくいため、海面の温度は比較的下がりにくいです。
また、このことから水分を含んでいない方が、より放射冷却が起きやすくなるため、乾燥している物体の方が温度が下がりやすくなります。
例えば砂漠のような乾燥した場所は、地表からの放射冷却が起きやすく、雲もほとんどできないため、昼と夜の温度差が激しくなります。
日本の場合であれば、冬場は乾燥しやすいため、夏よりも放射冷却が起きやすくなるわけです。
このように、放射冷却は常に起きているものの、水分の量や、他の物体から浴びている電磁波の量によって、温度の下がりやすさが変わるわけです。
まとめ
今回は天気予報でよく出てくる、放射冷却現象の原理を紹介しました。
放射冷却は気象用語なのかと思いきや、実はどんな物体にでも起こる可能性のある、物理現象なんですね~。
というわけで、原理を簡単におさらいしておきます。
- 地表のエネルギーが電磁波の形(主に赤外線)で熱が放出される
- 乾燥している良く晴れた夜は、そのまま宇宙に電磁波が飛んで行ってしまう
- エネルギーを出し切った地表が冷える
雲があると、雲から地表に電磁波が放出されるため、それを浴びた地表が温められてしまうせいで、あまり温度が下がりません。
また、水分は放射冷却が起きにくい物質なので、乾燥している冬の方が、より放射冷却が起きやすくなります。
よく”雲が断熱材の働きをする”なんて説明されますが、それは微妙に違うんですね~。
ちなみに私は一緒にいると暑苦しいと言われますが、それは私の体から出ている電磁波のせいでしょう…。
他人の放射冷却を妨げる管理人でした…。